兎吊木垓輔の試み
その1,抱きしめる
包丁が何かを刻む音と、時折水が流れる音がこの部屋には聞こえていた。(それ以外の音はない)
この部屋はダイニングキッチンになっており、彼の場所からは彼女の後姿がしっかりと確認できる。
(しかし彼は彼女のほうを向いてはいない。そこにある
二人は一切会話というものをしておらず、まるでそこにいるのは見ず知らずの人だという雰囲気に
包まれている。お互いがお互いに気付いていないのではない。ちゃんと気付いてはいるのだ。では
理由は何処にあるのか?それは二人の関係性にあった。
「でさ、もう一回聞くけどアンタなんでここにいるの?」
「なんでって・・・、理由が無くちゃ来ちゃいけないのかい?」
「そのとおり。良く分かったわねでも褒めてはやらないわよ。・・・大体なんで入ってこれたの?」
「なんでって・・・、愚問だね。俺は何でも素手で壊せるのだから」
「やっぱり鍵壊しちゃったのね。ストーリーには必ず鍵を開ける方法と言うものが存在していると
いうのになんて事なんでしょうね」
「その鍵を開ける方法が俺だって言ったらどうするんだい?」
「今すぐその減らず口叩き切ってあげるわ」
「出来るのかい?」
「ちょっとまってて今すぐ軋騎呼んでくるから(私の包丁使っちゃったら料理が出来なくなるし)」
「おいおいちょっと待てよ!」
かなり一方的なのだが、片方が片方を嫌っている。
「≪街≫が来ると俺が何も出来なくなるだろ」
「むしろそっちのほうが好都合よ」
「おいおい、そりゃないぜ
「・・・・・・」
「ああわかったよわかった俺が悪かった!だから許してくれ、
」
「・・・・・・」
「はぁ・・・俺はこんなにも君が好きなのだがね。君はどうして分かってくれないんだろうね?」
そして、かなり一方的なのだが、片方が片方を好いている。
「ロリコンの癖に何を言うのかねー。まったく。
「それは知ってるさ。あの戯言使いだろ?俺も会ったことがある。実に面白い男だった」
「そうね。彼は私も気に入っているわ。今開発途中のゲームの主人公(のモデル)なの」
にっこりととろけるような笑顔で、語尾にハートマークがつきそうなくらいに彼女が言うと、薄緑
のサングラスを押し上げて彼は変わらぬニタニタ笑いのままで(ようやく)彼女の方を見た。
「へぇ、どんな話なんだい?」
「開発途中のゲームの話を他人にするものじゃないわ」
ゲームのことを考えていて頭がいっぱいなのか、
は兎吊木が立ち上がったことに気付かない。
「他人だなんて、酷いな。俺たちの仲じゃないか」
「黙れよ。青か軋騎呼んでくるわよ」
「わかってる。冗談だ」
そして、忘れていた料理に集中しようと器用な手先を動かして具材を切りはじめた
は、兎吊木
がそろそろと音も立てずに(気配も消して)近づいてくるのにも気付かない。
「ねぇ、
?」
「?!」
兎吊木の腕が背後から
の腰に回された。
そのままふわりと抱きしめる。
「何し・・・ッ!」
「うぉ!!」
結果:驚いた
に包丁で刺されそうになる。料理中はやめようと反省。
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